2005年2月26&27日  ※ハヤシレポート
かぐら雪洞一泊ツアー
吹雪/腿パウダー

タイムスケジュールはレポートの文中を御覧ください。

ハヤシ、小山さん、Keiくん

※写真はすべてクリックすると大きく表示されます。
 



この記録は、ある男3人の壮絶な死闘を書いたものです。
今回はかなりの長文になっています。

「26・27日の件ですが、小山さんと中尾根北斜で1泊2日の雪洞泊ツアーを考えています。今の所、小山さんと自分だけですが、人数は3〜4人位(2人ならば行わず)と考えています。勿論、安全見て天候と雪次第ですが。如何でしょうか?」
カナダから帰ってきた2日後にケイ君からこのメールがきた。そして僕は「ぜひやりましょう!」と返信した。

26日朝6時30分、かぐら駐車場にある売店前に僕達は集合し、早速作戦会議をした。天候は駐車場で雪。おそらく上は吹雪いているだろう。予報では今日のコンディションは良くないが、ピークは夜ということだった。しかし、今日の時点で第1高速が動かなければ意味が無い。とにかくバックパックが重いので、できれば楽をして登りたい。
「どうしようか?」と話し合ってると、「第1高速を運転します」とのアナウンス。

「とりあえず行ってみようか?」ってことでヘビー級のバックパックを背負ってロープウェイに乗った。
ロープウェイ、ゴンドラと乗り継ぎ、ゴンドラ降り場に着いたのが9時前。天候は案の定吹雪いていた。ここでもまだ僕達は決断をしなかった。すると小山さんが「いきなり3人でラッセルはキツイでしょ?今日はWARPのツアーが入っているから、WARPが登るんだったらそれまで待とう」と言った。「それは名案!」ってことで、とりあえずレストハウスにバックパックをデポし、ゲレパウ食べ放題ツアーに出撃した。
今日はゲレパウの競争率が非常に低い。気持ち悪いくらいに人が少ない。僕らは各々のルーティーンでゲレパウをいただいた。

10時になり、第1高速の降り場にシン君たちが来てハイクの準備を始めていた。「お、WARP登るの?じゃ、俺らも行くか」バックパックをレストハウスに取に行き、僕達もハイクの準備を始めた。
今日は重装備なのでスプリットをチョイス。っていうか、僕のバックパックは小さく寝袋をとかコッヘルを付けたら板を付ける事ができないので、自動的にスプリットになってしまった。小山さんとケイ君はスノーシューだ。
WARPより遅れること約30分。僕達が登り始めたときは、風が強くてトレースが消えてしまっていた。「ヤベーぞ、これじゃWARPを待った意味が無い」小山さんとケイ君がトレースを探す。しばらく歩くとトレースが見つかりホッとする。「でもこの天気じゃWARPは5ロマまでじゃないですかねー?」と小山さんに言うと「それだったらまたそこで考えよう」と小山さんが言った。
しかし今日は風が強い。吹雪いているので視界も良くない。それでも着々と高度を上げ、5ロマの降り場に着いた。しかしWARPがいない!どうやら中尾根に向かっているようだった。これで僕らには予定決行という最終決断が下された。

中尾根につくと案の定シン君達がいた。「すいませんトレース使わさせていただきました。ありがとうございます!」とあいさつをかわし、僕達は北斜に向かった。
深い!深すぎる!!北斜に行くまでのラッセルさえも容易ではなく、シューで腰までになっていた。
入り口に着き、雪洞の場所決めをする。「もう今日はこのコンディションだし、今から雪洞作らないと夜になっちゃうから掘り始めよう」と小山さんが言った。
最初にケイ君が掘り始める。僕は掘り出された雪をツリーホールに投げ捨てる。小山さんは前日揚げておいた荷物が雪で埋まってしまっていたのでそれを探していた。
しばらくケイ君が掘っていたが1人では大変なので、入り口を2つにして2人がかりで掘り始める。最後に入り口の1つをブロック状にした雪を重ねて塞いで、出入口にブルーシートをかけてできあがり。立派な雪洞が出来上がった。この時点で16時近く。やっぱり結構時間がかかるもんだと思った。


雪洞の中に入り、荷物の整理をして休憩した後、「とりあえず飲んじゃう?」と小山さんがビールを渡してみんなで「かんぱーい!!」。プシュっとしたとたんに、気圧と中で凍ってたのもあって飲み口からビールが溢れ出してくる。飲んでも飲んでも溢れてきて強制一気状態(笑)。本当はゆっくり飲みたいのに・・・・・・。
で、その後小山シェフによる晩餐会が始まった。今日のメインメニューは「キムチ鍋」。これがまた美味かった!そしてその残り汁でうどんを食べる。雪洞の中は湯気でホワイトアウト状態。ケイ君がカメラで撮影をしているが、レンズが曇って上手く撮れない。僕もDVを取り出すが、見た感じすでに死亡状態。結露でやられているし、動いても湯気で曇ってしまう。
つまみにチャーシュー、野沢菜、しあげにスルメを炙って食べて晩餐会が終了した。

腹も満腹になり「明日の作戦を考えよう!」ってことで作戦会議。ここまで登ってきた感じだと雪が深すぎてまともに滑れないんじゃないか?と疑問が湧く。「とりあえず朝一はどこを滑るか?」・・・・・「やっぱ南斜にトラックつけて見せつけようじゃないか!」「でも南斜滑ったとしても、恐らく登り返しは鬼ラッセルになるかもね」「ま、それはそれでしょーがないんじゃないの?」などと色々話し合った結果、「朝起きて天気見てから決めよう」ということで、目覚ましを4時30分にセットして寝ることにした。時計は20時を回ったところ。


そう、ここまでは楽しかった・・・・・・・・・・・・・ここまでは・・・・・・。

とりあえず眠りについたけど、なかなか眠れない。特に寒いってことも無かったけど、寝ては起き、寝ては起きの繰り返し。
夜中にゴソゴソって音がして目がさめる。小山さんが小便に行くみたいだった。「ついでだから俺も小便してこよう」と小山さんが外に出るのを待つ。しかし小山さんはブルーシートに手をかけたまま一向に外に出ようとしない。
「どうしたんですか?」僕が小山さんに聞くと、小山さんが振り向きこう言った。
「ヤバイ、入り口が雪で埋まっちゃってる!」

「えーーーーーーーーっ!!!」

どうやらあまりの降雪に入り口が雪で埋まってしまったのである。かろうじて10cm位隙間があるだけだった。 この騒ぎにケイ君も起きだして、みんなでどうするか考えた。考えたって言っても答えは1つしかない。

まず、ブルーシートをはずし、雪洞内に入り口を埋めた雪を入れてしまい小山さんと僕が外に出て雪をどかす。ケイ君は雪洞内に入った雪を中から出す。時計を見ると夜中の12時を回ったところだった。「なんでこんな時間にドカチンやらなきゃならねーんだよ!」と小山さんが叫ぶ。外は相変わらずの猛吹雪。「なんだよ、ピークは夜じゃなかったのかよ!」こんな夜中のこんな寒いところで体が動くわけがない!
しかし3人の見事な連携により、入り口を埋めた雪はなんとか片付いた。
そしてまたブルーシートを入り口にかけ、3人は雪洞内に戻った。
「この天気ヤバイですよね?」
「ヤバイ・・・・・このままじゃ明日まともに滑れねーぞ。風は強いし雪は深いしで。」
「しかも明日第1高速動かないんじゃないですかね?」
「それじゃー南斜見せつけられねーな」
「どうしましょうか?」
「本当にやばかったら即下山だな」
「下山だったら昼まで寝てるか?」
「でもとりあえず予定通りに起きよう」
そんな会話をして、僕達はまた眠った。

朝4時30分、僕の携帯のアラームが鳴りみんなが起きだした。ブルーシートは風に叩かれバサバサと音を立てている。外を見ると昨日よりひどい吹雪になっている。
「今回は諦めよう!今日は即下山だ」決断は早かった。
朝食を済ませ荷物の整理をした。荷物は昨日より減っている訳だけど、なぜか重い。

「それじゃー下山するか!」憂鬱な気分のまま雪洞から出る。雪洞から出ると叩きつけるような吹雪。積雪も昨日より増している。
各々準備を済ませ、ゲレンデに向かい歩き出したが、いきなりの腰ラッセル(泣)僕のスプリットでさえも腿ラッセル状態。
方向的には中尾根に向かっているのだが、スタートしてからいきなりの鬼ラッセルに全然進まない。予定としては滑れそうな斜面までラッセルして、そこからなるべく高度を落とさないようにトラバースして中尾根に出るということだった。目の前の北斜を滑ったら、まず帰れなくなるのは非を見るより明らかだからだ。
ラッセル中に、かぐらの常連の人たちから心配の無線が飛んでくる。でも、恐らくここまでひどい状況だとは思ってはないだろう。でもありがたかった。
しばらくすると、斜度はゆるいがなんとか滑れそうな斜面に出た。「ここから板を履いて滑って行こう」ってことになり、滑りモードの準備をした。さっきも言ったが今回僕はスプリットの為、極寒の吹雪の中だと組み立てるのも面倒くさい。みんなが滑りモードになり、とりあえず小山さんが先頭で滑ってトレースをつけて、その後にケイ君と僕が続くことになった。
しかし今日の雪は深すぎて、滑ろうとした瞬間に板が沈んでしまい、滑ることすらできない状態だった。いきなりの挫折に言葉数も少なくなってくる。
ここではどうにもならない為、もっと斜があるところまでラッセルするはめになった。しぶしぶまたスプリットをばらした。

そこから大体200mくらいラッセルしたところで、ようやく滑れるような斜面に出た。「ここならいけるでしょ?」
「いける、いける」
僕達はそこで滑りモードの準備をした。
「よし、ここからトラバースで行こう。まず俺が行って、適当な場所に出たら無線を入れるよ」と小山さんが滑り出した。見えなくなっていく小山さんの後姿を見ながら、僕とケイ君は「なんとか中尾根まで行っちゃってくれー」と心の中で叫んだ。
しかし物事はそう上手くはいかない。小山さんは滑り出してから100mくらいでスタックしてしまった。「だめだ、深すぎて滑れない」との無線に絶望感が漂った。
「ケイ君とハヤシ君はそこから高度を落とさないようにして、いける所まで行っちゃって。俺はここから行くから」と小山さんが言った。
「じゃー行ってみようか?」ってことで、まずケイ君からスタート。続いて僕が行った。はっきり言って全然進まない。それでもなんとか滑っては止まり、滑っては止まりで少しずつ距離を稼いだ。
滑り出してから300m位は進んだろうか?僕らより低いところの小山さんが2回目のスタックをし、僕らもこれ以上進めなかったので3人が合流してラッセルをすることにした。

本日3回目のハイクモード。僕のスプリットのシールの粘着力が無くなっていた。
もうここからは中尾根までラッセルだ!とりあえずスプリットの僕が先頭に立つ。スノーシューで先頭はさすがにキツい。まぁスプリットでも死ぬほどキツいんだけどね(泣)普段滑ってトラバースしているこのルートは、そんなに距離は無いと思っていたが、ラッセルだと異常に距離を感じた。歩いても歩いても中尾根に出ない。
途中、またしても色々な人から無線が入る。予想通り第1高速は動いてないらしい。でも今はそんなことはどうでもよかった。とりあえず早く中尾根にたどり着きたくて必死でラッセルした。天気は相変わらずの吹雪。小山さんのヒゲとまつげは凍りつき、無線のスイッチは押したら戻らなくなるほど凍り、顔の感覚は無くなってきた。

6時30分に雪洞を出発して、今までラッセルしっぱなしだったので、風をかわせるところで休憩をとった。時間はだいたい10時だった。
「八甲田の雪中行軍ってこんな感じだったんですかね?」とケイ君が言った。
「その場にいたわけじゃないから分からないけど、それよりヒドイんじゃないの?」
「とりあえず12時位までにはゲレンデに出たいですね」
「いやそれは無理だろう」
ラッセルはキツイけど、まだ時間に余裕があるのがせめてもの報いだった。これが夕方とかだったら休憩なんかしてる場合でもないし、みんな神経がピリピリしていたと思う。
朝早くおきて雪洞を出発したのが正解だった。

「よーし気合入れて行くかー!」僕達は再びラッセルを開始した。ここからは緩やかな下りになっていたので、僕のスプリットでは膝位のラッセルになった。「小山さん、このまま高度落としながらで大丈夫ですかね?」心配性の僕は度々小山さんに聞いた。「大丈夫だと思うよ・・・・・・・まかせるよ!!」と言われ、そのまま高度を落としながらトラバースをした。
しばらく行くと、だんだん中尾根に近い風景になってきた。しかし、なんとなく高度を落としすぎじゃないかと心配して、少しずつ高度を上げながらトラバースした。普段行き慣れた所でも、コンディションが変わると同じ所でも風景が一変してしまう。先頭を行く僕は、少し自信が無かった。予定より高度を落としすぎて、また登り返しになったら目も当てられない。なるべく楽なうちに高度を上げていこうと思った。

しばらくラッセルをしていると、小山さんが「あそこに見えるの中尾根じゃない?」と言った。見上げると確かに中尾根が見えてきた。中尾根が見えてきただけで安堵感が沸き、会話も増えてきた。

とうとう目標の中尾根に着いた。吹雪でガスっている先にゲレンデが見えた。僕らはホッとした、まだ先はあるけれど、ゲレンデが見えただけでもすごくホッとした。あいにく第1高速は動いていないので、ゲレンデで流れる音楽やリフト降り場のアナウンスが聞こえない。
「とりあえず休憩しましょう!!」
「そうだな、もうここまで来れば安心だ」
ここで時計は11時を指していた。上手くいけば昼までにゲレンデに戻れると思った。
しばらく休憩していると、反対側の斜面から「ホ〜ワッ!」と声をあげてスキーヤーらしきグループが滑っている。よく見ると石川さんだった。
石川さんたちはゲレンデをハイクして第1高速降り場から滑ってきたのだ。しかも僕らを心配して白樺沢にトレースをつけてくれるという。
「小山さん、僕らがトレースをつけるので、それ使ってください」と無線が入る。しかしそのトレースはボトムより反対の斜面の上の方にあるので、僕らが中尾根から滑ってそこまでたどり着けるか分からなかった。ここまでの行程を振り返ると中尾根から滑って帰れるとは思わなかった。
「この雪じゃあそこまで滑って行けないぞ!」
「じゃーこのままトラバース気味に滑ってゲレンデに近づきますか?」
「そうしようか?」
ということで、僕達はそのトレースを使わずに、トラバースしながら滑り降りることにした。
まずは僕から、ゆっくりと滑り出したが、真っ直ぐにしか進めないくらいの深い雪だった。「方向を変えたら絶対スタックするな」と思い、悔しいけどそのまま真っ直ぐボトムに滑り降りた。ボトムに着き「他の2人は?」と思って後ろを振り向くが、2人もそのままボトムまで滑ってきた。「だめだ、まともに滑れねーよ!」
ボトムに着いて上を見上げると、150m位先にゲレンデの迂回コースのネットが見えた。「もうあそこまでラッセルで行こう!」
「それが一番手っ取り早いっすね」
ということで本日4回目のハイクモード。僕のスプリットのシールは完全に粘着力が無くなり、しかたなくビニールテープでグルグル巻にして押さえつけた。
ケイ君が先頭でラッセル開始。またしても腰上のラッセルだったが、ゲレンデに近づくにつれて浅くなってきた。

ついに、コースのネットをくぐり、僕達はなだれ込むようにゲレンデに到着した。
「やったー!やっと着いたぞ〜!!」
「スゲー疲れた〜」
「圧雪ってすばらしー」
などと言いながら体力の尽き果てた体を迂回コースに預ける。時間はちょうどお昼の12時だった。朝6時30分に雪洞を出発して約5時間30分の死闘だった。
「とりあえずレストハウスに戻りましょう!」
僕達は疲れた体にムチを打ってレストハウスに向かってゲレンデを滑った。
「気持ちイイ〜」
久しぶりの感触。普通に滑るってこんなに気持ちがいいもんだと思った(笑)

レストハウスに着くと「お帰り〜、大変だったね〜」と色々な人から声をかけられる。みんなが無線のやり取りを聞いて心配していてくれた。とにかく「大変だったよー」しか言えなかった。

しばらくすると、小山さんの知り合いが「第1高速動きますよ、行かないんですか?」と言ってきた。即答できない・・・・・・・。しばらく考えてから「よーし、うっぷん晴らしにパウダー食ってくるか!!」と僕らも意気込んで第1高速に乗った。「いやーリフトって素晴らしい!!!」
リフトを降り、僕とケイ君はジャイアント、小山さんは別の所を滑るって事でそこで別れた。
勢いよくジャイアントコースに突撃したが、すでに僕の足は棒のようになっていた。前の人が滑ったトラックをノーズを上げて乗り越える事ができなく、大クラッシュ!!気が付いたら仰向けになり空を見ていた。「俺、もうダメだ。まともに滑ることができない・・・・・・」「ケイ君先に行っちゃったかな〜?」と体制を立て直し下を見ると、ケイ君もクラッシュしていた。残りのパウダーをゆっくり滑り降りリフト乗り場に行くと、雪まみれの小山さんがいた。「いや〜転んじゃったよ」結局3人ともクラッシュしていた(笑)もう僕らには、まともに滑る体力が残っていなかった・・・・・・。

その後、駐車場に集合することにして僕は下山した。
本当に疲れた2日間が終わった。しかしこれは自分にとってとても大きな経験になった。でもその代償として吹雪で叩かれていた左頬が少し凍傷になってしまったけど。
山の天気はなかなか予報(予想)通りにはいかないね。だけど雪洞は楽しかったので、今度リベンジしたいですね。